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様々な合成繊維が開発されていながら、未だに愛され親しみ続けられているウール。
天然繊維だからこそ持ち得たその特徴は、現代の技術を駆使しても作り出すことはできません。
その魅力的な性質には矛盾が多く、それがまさにウールの特徴なのです。

1.冬は暖かいのに、夏は涼しい?ウール1本1本の繊維をよく見ると、クリンプという縮れがあります。この縮れた繊維が複雑に絡み合い、空気層を作っています。空気は熱を伝える力が非常に小さく、断熱性はもっとも高いといわれています。そのため冬は暖かく、夏は涼しく過ごすことができます。
昼夜の温度差が極端な砂漠で生活する人々が、1枚の大きなウールを羽織っているのは、こうした特徴があるからです。

2. 水ははじくけど、湿気を吸い取る?
ウールの繊維は、中央の皮質部と呼ばれるところがスポンジ状になっており、湿気はこの部分が吸収します。また、繊維の表面はウロコ状のもので覆われており、これが水をはじくわけです。
少量の水なら繊維に染み込まず水滴になり、その同じ繊維がスーツ1着で、およそコップ1杯分(180cc)の水分を吸収するといわれています。

3.燃えにくい!ウールの主成分は髪の毛や爪と同じタンパク質なので意外と燃えにくく、合成繊維のように燃え続けることはなく、一定時間で自然に鎮火します。
ホテル内のカーペットやカーテンなどにウールが多く使われているのはそのためです。

4.伸びたり縮んだり!ウールの繊維を構成する分子は、強力な鎖で繋がっていて、繊維を引っぱると30%も伸び、離すと元の長さに戻ります。
スーツもハンガーに掛けておくと、シワはウールの弾力性により元に戻ります。綿や合成繊維では起こらない不思議な特徴です。

5.汚れにくい!繊維の表面の外側には、人間の髪でいうキューティクルとい薄い膜で覆われています。これが水溶性の汚れをはじき、泥水がかかっても乾いてから払えばシミになりません。
濡れタオルや中性洗剤を使えば、コーヒーシミや油シミもある程度は落とすことはできます。

6.染めやすく、色あせしにくい?ウールは吸湿性が高いので、染料を繊維の中に十分吸収するため、深みのある色合いに染め上がります。
他の繊維と違い、染料の分子結合が強いので、一度染めると色落ちしにくく、 美しい色合いを保つことが出来ます。

標高3000m以上の山岳地帯に棲息している羊は、過酷な自然条件の中で生き抜くため、一見矛盾した性質を備えていったわけです。
ウールは人工では作り出せない、自然が生み出したパーフェクト素材です。
そんな事を考えながらスーツを見ると、「たまには手入れでもしようかな」と思ったりしませんか?


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